オレンジ

 

 猫にやられた傷がまだ痛む。ミミズ腫れになってしまってひどい有様になっている。

 夕方、親に精神科へ連れて行ってもらう。薬をバカみたいに出されたため受付の人に陰口を叩かれる。こっちからそんな量を望んでいる訳ではないのに。

 診察が終わり家に帰る車中で、爪を切り忘れていたことに気付く。飲食バイトをしている身としては失態だ。

 夕飯に辛子明太子が出た。実に2年ぶりに口にする。なんだかいかんともし難い気持ちになった。何と言って良いものか分からないが、とにかく良い気持ちになった。

 猫も受付の人も爪を切り忘れた自分も、皆今なら許せそうな気がする。それだけの気分の高揚を感じている。辛子明太子、ひいては食にはそんなパワーがある。今のような精神の状態が続けば良いのになあ、などと考えながら伸びた爪を眺めた。

 

以上